1.カビの種類と特徴
部屋に見られるカビの種類
カビ(菌類)の種類は自然界では6万5千とも7万とも言われますが、建物内から検出されるカビの種類は50~60種類です。
一般的にカビは湿度の高い所のみ生えると思われていますが、実は他の微生物が生えないくらい湿度が低い所でも生えるカビがあります。カビの発育可能とする最低湿度を基準にし、好湿性カビ,耐乾性カビなどに分類することができます。
①湿気の多い所を好むカビ(好湿性カビ)
浴室、洗面所、キッチンなど水に濡れる場所では、クラドスポリウム(クロカワカビ)、フザリウム (アカカビ)、アルテルナリア(ススカビ)、オーレオバシデウム(黒色酵母様カビ)などが発生します。
②湿気と乾いた場所両方を好むカビ(耐乾性)
一般住宅内の押入れや畳、じゅうたんなどにアスペルギルス(コウジカビ)、ペニシリウム (青カビ)がよく発生します。
*最近は耐乾性のカビが多く検出されています。
③乾いた場所を好むカビ(好乾性)
壁、押し入れ、じゅうたん等、水に濡れる事のない所では好乾性カビと呼ばれるユーロチウム、ワレミアなどが発生します。
2.カビは見た目にも汚く時には人の健康を損ないます
■恐るべしカビの被害
・居住者が病気になる
・食べ物が悪くなる
・家や家具などが傷む
・ダニが繁殖する
■カビによる病気
カビが原因となる病気には次のようなものがあります。この中には健康な人にとって無害であっても抵抗力が弱っている人には、有害な場合があります。
◆アレルギー性疾患
カビの中には小児喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎等のアレルゲンの一つとなるものがあります。空気中の浮遊カビを吸う事で特定の臓器に疾患を与え、呼吸器アレルギー疾患の原因として吸入性抗原となる場合があります。子供のゼンソクの80%はカビとダニが原因と言われています。湿度、温度、栄養などの条件が整えば、どんな場所にも発生するので要注意です。
◆カビ感染症
みずむし、しらくも等の皮膚糸状菌症、カンジタ症、アスペルギルス症、夏型過敏性肺炎(トリコスポロン症)
◆カビ毒
発がん性のあるアフラトキシンや真菌中毒症。カビが作り出す代謝産物の内で、人や動物に対して有害な作用を示す化学物質の事を総称してカビ毒と呼んでいます。カビ毒として確認されているものは現在300種類以上報告されています。
カビは細菌とは異なり、多細胞で出来ています。糸のような菌糸と胞子から成り立っていて、繁殖に都合の良い場所にあると2,3日で目に見える集合体(コロニー・この時点でカビが生えたという)になってしまいます。空中に舞っている胞子は水分を吸って発芽し、汚れを栄養源にして菌糸(長さ10~30ミクロン、幅2~10ミクロン)を伸ばし枝分かれし、子孫を残すために胞子を形成して繁殖します。
家の中でも食品はもちろん、押入や浴室などの湿気の多い所によく見られます。1週間もすると周りにたくさんの胞子を撒き散らします。作られた胞子は風や水によって他の場所に運ばれて、再び発芽します。
カビが繁殖しやすいのは湿度65%以上の所、また温度は人間が快適と感じる20℃から28℃のあたりです。
3.カビが好む生育条件とは?何処にどれくらいいるのか?
■カビが好む条件
一般に、カビは湿気の多くなる梅雨時が一番発生しやすいと考えられています。しかし、これまでのわが国の住居が高温多湿に適合した伝統的な木造によっていた形態から、高気密・高断熱のコンクリート系集合住宅へとニーズが変化したのに伴い、十分な暖房設備ののもとで、冬でもカビの生育にとって好ましい環境になっています。
カビが好む生育条件は以下のとおりです。
①栄養源がある(食品、アカ、フケ、これらを含む埃など)
②湿度が高い(70~90%)
③温度が高い(20~28℃)
ですが、時には温度が0℃以下だったり、湿度が30%以下でも生き延びることもあるので注意が必要です。
■室内のカビの数
部屋の空気中のカビの数は、空気1立方メートル中に含まれる胞子の数で表します。夏期は10~10,000個、冬季は数十個です。部屋の塵中のカビの数は、部屋の塵埃1グラム中に含まれる胞子の数で表します。少ない所では1,000個、多いところでは10万から100万個のカビの胞子が存在しています。一般的に、100個以下は少ない、1000個以上であれば多いと考えられます。
■カビの生育するところ
カビの餌となるような水や埃がたまりやすい所、手が届かない場所、あまり使用せず押入れにしまってあるものなどにカビが生育します。エアコンのフイルター家具やソファーの裏側、押入れ、靴箱、浴室、洗面所、キッチンなどは要注意。
◆キッチンは水分と温度が最適
特にキッチンでは調理をとおして、また石油やガスの暖房器具から空気中に水分が放出されます。この空気中の水分は、コンクリート部分や壁面はもちろんのこと機密性の高い窓からも外へ逃げることができず、その結果、結露が発生し、カビの原因になります。暖かい温度の中で濡れたままの状態は、カビの繁殖に絶好の環境となっています。
◆浴室は快適で餌が豊富
床、壁、浴槽、フタ、桶、イスなど、浴室にあるもの全てカビの生えやすい場所となります。
浴室に付着する汚れは主として「脂肪酸カルシウム」による汚れです。これは「石鹸カス」と呼ばれるもので汚れの70%を占めているものです。カビはこの石鹸カスを酵素や酸を出して栄養源に変えてしまいます。しかも浴槽を構成する床、壁、天井、備品などの汚れも栄養源にしてしまうのでカビにとって浴室はまさに栄養源の宝庫。浴室にカビが生えた経験のない人はほとんどいないほどです。